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まったくもー!
なんだって、あたしが最後まで仕事させられて社長は早退なの!
仕事をしてるとだんだん腹が立ってきたあたしは、その勢いのまま社長宅マンションに乗り込んだ。
「いらっしゃい、柚葉ちゃん。待ってたよ。」
待ってたよ、じゃないって。待ってたよ、じゃ。
その笑顔に騙されないんだからー!
なんて思っていたはずなのに・・・
「わっ。」
何コレ。すごい!
間接照明と、クリスマスツリーに飾られたイルミネーションの明かりだけの部屋は・・・
シンプルな装飾がなされていて・・・
いつものリビングとは雰囲気がガラリと変わっていた。
しかも。
テーブルの上にはローストチキンの丸焼きと・・・ケーキ。
サラダや、美しい料理の数々・・・。
まるで高級レストランのコース料理が全部出てきたような・・・
「春樹さん・・・まさかひとりでコレ全部・・・」
「そうだよ。柚葉ちゃんをビックリさせたくてね。ちょっと前から準備してたんだよ。料理は昨夜からだけどね。柚葉ちゃんが来るまでに間に合ってよかった。」
「・・・。」
まさか。
こんなステキなことをしてくれるなんて夢にも思っていなかったあたしは思わず言葉を失った。
一応、これまでに付き合った人はいたけれど、こんなことまでしてくれなかった。
せいぜいあたしからせがんで、アクセサリーを買ってもらったりとか・・・。
あたしって・・・もしかして・・社長にものすごく愛されているんじゃないだろうか。
「ちなみにクリスマスプレゼントは後でのお楽しみ。」
「・・・あ、ありがとう・・・ございマス。」
感動して、動けなくなってしまったあたしを社長がぎゅっと抱きしめてくれた。
あたしってば・・・社長が早退して腹が立って・・・イライラしちゃったりして・・・バカみたいだ。
「これは、柚葉ちゃんからのクリスマスプレゼント?」
「え?あ・・・」
社長があたしの手元の紙袋に視線を落とす。
こんなたいしたことのないもの・・・社長に比べたら・・・あたしのプレゼントなんて・・・なんて意味のないものなんだろう。
恥ずかしすぎる。
社長はあたしの手から紙袋を奪い取ると、包装を丁寧に解いた。
「へえ、クリスマスキャンドルだね。」
「そうです。すみません安っぽくて。」
「・・・柚葉ちゃん。」
「はい?」
「これ・・・手作り?」
「・・・。」
あ、すぐに気づかれた。
やっぱり急いで作ったし・・・。
「柚葉ちゃん、なんでこういう可愛いことするかな~。」
手作りキャンドル。
キャンドルキットを使えばあたしにもできそうだったから、作ってみた。
専用のジェルと小さな恋人同士の人形に、クリスマスツリーを使って。
でも・・・
全然たいしたことない・・・。
「で、こっちは入浴剤?」
「ハイ。なんか花びらが出てくるみたいで・・・。」
そう。キャンドルだけじゃものたりないので、かわいい入浴剤も買ってみた。
社長はなにげにかわいいもの好きだから。
「柚葉ちゃん・・・そんなにお風呂でしたいの?」
「え?」
「キャンドル灯して・・・ロマンティックな入浴タイムがいいんでしょ?」
「え?え?」
「キャンドルの明かりだけにして・・・あんなことやこんなことも・・・」
「は、春樹さん?あの・・そういうつもりじゃ・・・」
「今夜は楽しみだね、柚葉ちゃん?」
「え、えええええ?」
社長がニヤリ、と笑ったのを見て後悔してももはや遅い。
一体何が待ち受けているのー!!
「じゃあ、料理が冷める前に・・・とりあえず乾杯しようか。」
「え、えーっと・・・そうですね・・・っ。」
「今更そんなに緊張しなくても大丈夫だよ?」
「してません!」
「ならいいけど。」
本当のところ、ドキドキして・・・
いつまでも感動しまくってた・・・なんて社長には言えない。
そして・・・社長の作った食べきれないほどの料理を堪能ししたあと、社長に強引に連れられてお風呂に入らされたのは言うまでもなく・・・。
結局社長の手の内で転がされてしまうあたしは、もうこの人から離れられないのかもしれない。
こうしてクリスマス・イブの夜は更けていった・・・。
おしまい。
ふたりらしい?クリスマス・・・かな。
ありがとうございました(〃∇〃)