このサクラの木の下で告白をすると両思いになれるという言い伝えがあった
高校生のちょっぴり切ないじれじれの純愛ストーリー
沢井 琴音 (さわい ことね)
・3年2組
・筝曲部
河野 真 (こうの しん)
・3年2組
・テニス部
<本編> 全10話
【サクラの木】第1話 サクラチル
(1)学校の体育館裏にひっそりと佇む一本のサクラの木。このサクラの木の下で告白をすると両思いになれるという言い伝えがあった。高校生にもなってそんな言い伝えを信じている生徒がどれくらいいるのだろうと思っていたけれど、意外にも多くて、もう何組も…
【サクラの木】第2話 受験生
(1)受験生といっても1学期は夏の最後のコンクールに向けて、わたしたち筝曲部は練習に励んでいた。たかが部活、されど部活。ずっと憧れていた和楽器の世界。亡くなった祖母がどこかのお茶会に連れて行ってくれたとき、美しい着物を着て琴を弾く姿に憧れて…
【サクラの木】第3話 夏休み
(1)夏の始めのコンクールが終わると、わたしたち3年生は引退することになった。先輩後輩なんていう壁なんかないくらい仲良くしてきた後輩たちにバトンを渡すことになったけれど、わたしもつぐみもまだまだ顔を出しにくると約束をした。 夏服の…
【サクラの木】第4話 学園祭
(1)AO入試で進路を決定させていく生徒、受験勉強の追い込みに入っている生徒、就職先が決まりバイトに励む生徒、いろいろな状況下にいる秋真っ盛りのこの時期に、学校では学園祭の準備が進められていた。2年生が中心となって、3年生は自由参加だけれど…
【サクラの木】第5話 白い天使
(1)季節はあっという間に移り変わり、コートを着て学校に行き始めたと思うとすぐ終業式を迎えた。終業式のあとには恒例の表彰式もあって、河野くんの名前が呼ばれ、その後にわたしの名前も呼ばれた。次にこの壇上にあがるのは卒業式で、そのときにはこの高…
【サクラの木】第6話 卒業式
(1)まだ冬の気配の残る3月、蕾のままの桜並木の通学路をわたしたち3年生はそれぞれ特別な思いを抱えながら登校した。 「おーい、最後くらいしゃきっとしろー」 お互いの進路の話でわいわいざわざわ騒ぐ3年生に、学年主任の先生が…
【サクラの木】第7話 ふたつの道
(1)卒業式から2週間後、わたしとつぐみは一緒に上京した。といっても特急電車で1時間ほどの距離だから、いつでも帰ろうと思えばすぐに帰れる距離だ。数多の大学がある中で、親友と一緒に学部こそ違えど同じ大学に通えることは何より心強い。特急電車の中…
【サクラの木】第8話 1年後
(1)「ことー!!こっちこっち」 カフェに入ると、つぐみが恥ずかしげもなくぶんぶんと手を振った。わたしはカフェオレのSサイズを注文して、つぐみの向かいに座った。 「つぐみ、もう準備終わったの?」 突然呼び出され…
【サクラの木】第9話 サクラサク
(1)「うわー、すごい。空が広いね~」日本よりも何十倍も広い大地を持つアメリカは空もどこまでも広く澄み渡っていた。初めての海外にテンションがあがっているつぐみの横で、ああそうか、ここはもう日本じゃないのだ、と改めて回りを見回してみた。当然の…
【サクラの木】第10話 伝説の木
(1)「小学生の頃からずっと。今も、これからも・・・」 河野くんの真剣な瞳に思わず身体が中心から熱くなるのを感じた。 「俺の心にあるのは琴ちゃんだけなんだ」 わたしはそのとき、もう一度あの場所で、河野くんと一緒…
【サクラの木】あとがきのようなもの
最後まで読んでくださった皆さま、ありがとうございました。 えー、こってこての高校生の純愛が書きたくて出来上がったお話です。とはいっても、いまどきの高校生ってどうなの?とは思いながら・・・。敢えて、昔の少女マンガっぽい雰囲気をイメー…
【サクラの木】番外編 花の盛り、淡い恋
(1)あの人を初めて見たのは入学式の日だった。体育館での入学式を終えて渡り廊下を歩いていると、どこからとなく桜の花びらが舞い散ってきた。今年の桜ももう終わりだ。校庭にあるほとんどの桜の木には花がわずかにしか残っていない。散りゆく花びらの中に…